第22章 鉄の腸
――正しいのは白だと誰が決めたのだろう。
「ぐちゃぐちゃでしょう? こんなモノですよ僕の中身なんてモノは。」
「――日向さん。あの――。」
「お相子よ、朱ちゃん。謝らないで。私にも私の正義があったのは事実だけど、貴方の友達を見殺しにしたのも事実だわ。」
口を開きかけた朱の言葉を遮って、泉が言う。
「――どうして!日向さんはあの時、槙島について行ったんですか!どうして私達を――、狡噛さんを裏切ったんですか!」
縋るように訴える朱に、泉は少しだけ表情を和らげる。
「――ごめんね。」
「なんで――!謝るんですか!どうして違うって言ってくれないんですか!」
「――慎也、コレ外して。」
縛られている両手を見せるが、慎也は渋る。
「嫌だ。」
「逃げないわ。約束する。本当にソッチの趣味があるんなら後で付き合ってあげるから。このままじゃ朱ちゃんを抱き締められないでしょ?」
その言葉に、慎也は渋々泉の両手の縄を外した。
「――覚えておけ。次に俺から逃げたら、俺が死んでやる。」
「――怖いこと。」
外れた手を振れば、泉はそっと朱を抱き締めた。
「ごめん、ね。」
「――日向さん!――私、撃てなかった!あの時、撃てなかったんです。そして今回も殺せなかった。槙島を許せないのに!」
「うん。」
涙ながらに叫ぶ朱を、泉は優しく宥めてやる。
「――日向さんの正義ってなんなんですか?!私達の正義って一体――!」
「みんな――、見て見ぬ振りをしたのよ。危険が確かにそこに存在するが故に。」
「逆に存在しないものとして扱わなければ正気が保てなかった。」
泉の言葉を引き継ぐように、慎也が言う。
「――この街の市民はそこまで器用だったでしょうか?――私も含めて。」
「俺は多種多様な人間を一括りにしたような話し方はあんまり好きじゃないんだが、ここは敢えて大雑把に行こう。人間は器用なモノだと思う。自分の責任を回避する努力を無意識に行う事が出来る。」