第6章 無垢な愛情という残酷な枷
「コレはあたしのですぅぅ!」
「ちょっと!僕が先に見付けたんだよ、コレ!」
「嫌です、譲って下さい!」
「どんだけ図々しいの!」
一枚の手拭いを巡って、店先では男女が争いを繰り広げていた。
「ってか、コレ男物だよ?君は女の子でしょ?」
男がため息混じりに言う。
「誰もあたしが使うなんて言ってないじゃないですか!人にあげるの!」
「人?あ、分かった。恋人でしょ?」
「そうって言ったら譲ってくれるの?」
ぱぁぁと表情を明るくした綾女の隙をついて、男は手拭いを奪い取る。
「や~だよ。コレ僕も狙ってたんだからね。頂き!」
「あ、ズルイ!!」
結局手拭いは男に買われてしまい、綾女はため息をついた。
「あ~ぁ。千景に似合いそうだったのになぁ――。」
「千景ってのが君のオトコ?」
「きゃぁ?!って貴方、まだいたの?」
耳元で声を掛けられ、綾女は驚く。
「貴方じゃなくて沖田総司って言うの。君は?」
「――綾女です。」
「綾女ちゃんか。――仕方ないなぁ、はい。譲ってあげるよ。」
落ち込む綾女の顔を見れば、総司はため息と共に先程の手拭いを渡す。
「え――?いいの?」
「その代わり、お団子奢ってよね?」
「うん!有難う、沖田さん!」
Ep-06:無垢な愛情という残酷な枷