第28章 前を向いて歩いてきたことをどうか、肯定しないで下さい
夢を見た後で、目が覚めて思う。
嗚呼――、まだ私は生きている。
Another-02:前を向いて歩いてきたことをどうか、肯定しないで下さい
「千鶴。冷えるぞ。」
雪の深い深い山奥。
千鶴と土方はそこにいた。
身を隠して生きて行く、言わば世捨て人のような人生。
それでも千鶴は幸せだった。
「歳三さん。お早うございます。」
「あぁ、お早う。こんな朝早くからお前何してんだ?」
まだ眠いのか欠伸をしながら、土方は問う。
「――太陽を見ていたんです。」
「太陽?」
「はい。今日も一日が始まったんだなって、そう思えるから。」
その言葉に、土方は後ろから千鶴を抱き締めた。
「――アイツら、どうしてんだろうな。」
「アイツら?」
誰を指しているのか分からず、千鶴は首を傾げる。
「風間とあの女だよ。綾女って言ったか。」
その名前は酷く懐かしく感じた。
「――きっと元気でやってますよ。」
「だろうな。」
薄桜鬼と皮肉な名を付けたのは、ある意味最も妬んだ男かも知れないと土方は思った。