第27章 遠い明日から、過ぎ去った昨日から、僕を呼ぶ声がした
「この気配は、まさか?」
「千景――?」
何とも言えない顔をする千景に、綾女が首を傾げた瞬間。
懐かしい声が轟いた。
「お~い!風間、綾女!久し振りだな!」
「し~ちゃん?!と、原田さん?!」
そこにいたのは、不知火と原田だったのだ。
「よぅ、久し振りだな。」
千景の前までくれば、不知火はニカッと笑う。
「不知火。貴様、生きていたのか。それに――、原田だったか。何故コイツをここに連れて来た?」
ジロリと千景の赤い目に睨まれるも、左之助はあっけらかんと笑う。
「そう嫌な顔すんなよ。綾女がいるって言うから会いに来ただけだ。元気そうだな。」
「わっぷ!痛い、原田さん!」
わしゃわしゃと綾女の頭を、その大きな手で撫でる。
「――本当に。生きてたんだな。」
不意に手が止まれば、左之助の真剣な声がする。
綾女も苦笑しながら、彼を見上げた。
「原田さんも。また会えて嬉しい。」
それは心からの言葉。
少しだけだったけれど、お互いが存在を知ったあの頃。
明日はわが身かと言う動乱の中で、こうして生きていてくれた事を純粋に嬉しいと思った。
けれど。
旦那様はどうやらそれがお気に召さなかったらしい。
「おい。勝手に人の妻に触るな。」
「妻って、――え?!お前ら、結婚してんのか?!」
千景が鬼で綾女が人間と知っている左之助は純粋な驚きを上げる。
「だァから言ったろ。つか風間をあんま煽んな。綾女の事は冗談で済まなくなるから。」
何度も被害に遭った不知火は本気で言う。
「し~ちゃんも。元気そうで良かった。心配してたんだよ?」
「ん、悪い。なかなか混乱してる時代だと連絡の仕様がなくてな。文とか出すより自分でこうして来た方が早ェと思ったんだ。」
「そっか!ね、千景!天霧さんも呼んで、皆でおでんしてい~よね?」
振り返って満面の笑みで言われたら、千景もダメと言う訳には行かなかった。
「――好きにしろ。」
「やった!天霧さん、呼んで来る!千景、中に案内してあげてね!」
バタバタと走って行く綾女を見ながら、不知火は苦笑する。