第27章 遠い明日から、過ぎ去った昨日から、僕を呼ぶ声がした
それはきっと魂が呼び合ったのだろう。
EAnother-01:遠い明日から、過ぎ去った昨日から、僕を呼ぶ声がした
「千景、おはよ~!起きて!」
「――ウルサイ。」
風間千景は鬼の頭領である。
幕末時は長州に手を貸して人間と関わっていた時期もあったが、幕末終焉と共に人間の世界から手を引いた。
やがて鬼の里は西の山深くへと居を移し、人里離れた山奥にその集落を作っていた。
しかし。
ただ一人、その鬼の集落に居を許された人間がいた。
それが綾女である。
あの風間千景の嫁として、すっかり里の中では受け入れられていた。
「さっき隣のおば~ちゃんが大根くれたの!寒いから今日おでんで良いよね?」
まだ布団の中にいる千景の横で、綾女は楽しそうに言う。
「で?まさか貴様、それを確認する為に起こしたんじゃなかろうな?」
「え?うん、そう。だって嫌って言われた困るじゃない?」
「――はぁ。」
どうにもこの女は能天気だと千景は思う。
怒る気も失せれば、仕方なく布団から出た。
「あ、起きた。ついでだからお布団、干しちゃうね!」
そう言えば、綾女はその小さい身体で布団を抱える。
「――貸せ。」
「え?あ、千景!」
横からその布団を取って庭に歩き出せば、残りの枕などを持って追いかけて来る。
「ありがとね、千景!」
「フン。お前がやるよりも俺がやった方が早いだけだ。」
こんな日々が心地良いと思い始めたのは、一体いつの頃だったのだろうか。
最早思い出す事さえ困難なぐらい、時代は流れたのだ。
「――?」
「千景?どうしたの?」
布団を干した後、庭で北斗を遊ばせていれば千景が不意に顔を上げる。