第25章 まわる世界にめぐる月日と戻らぬ時の残酷さ
その瞳は嘘を付かないけれど、
Ep-25:まわる世界にめぐる月日と戻らぬ時の残酷さ
「――寒い。」
「北だからな。当たり前だ。」
綾女とは対照的に千景は、涼しい顔で言った。
「鬼って寒くないの?」
「バカもの。寒さは感じる。だが俺はこれぐらい何ともない。――だからコレはお前が羽織ってろ。」
憎まれ口を叩きながらも差し出された羽織は千景の匂いがして、綾女は微笑んだ。
「有難う。」
「フン。さっさと行くぞ。この調子では日が暮れる。」
二人が函館に着いた頃には、新撰組は壊滅状態になっていた。
土方と千鶴はこの地に留まっていると知り、行方を捜していた。
「――生きる意味を失っても、人間って生きなきゃ行けないんだね。」
荒れた地を目にすれば、綾女が皮肉そうに呟く。
「くだらんな。生きる意味など、死んだ時に思えば良い事だ。」
「――千景は強いね。」
それ以上は何も言わず、千景の後を追う。