第24章 いっそ突き放してくれたら良いのにと、云う我侭
「分裂って――、じゃあ幕末は?」
「事実上、終わりを告げるでしょう。倒幕派の勝利と言ったところですか。」
「フン。我らが手を貸してやったのだ。当然だろう。」
千景がどこか憎々しげに言う。
綾女は複雑な気持ちになりながらも、更に問う。
「沖田さんと千鶴ちゃんは?」
「沖田総司は労咳で病死した、と聞いております。彼女は――、土方と共に函館に向かったと――。」
その言葉に、綾女は放心する。
「――沖田さんが、死んだ?」
呆然とする綾女に舌打ちをすれば、千景は口を挟む。
「――綾女。同情などするな。奴らが選んだ運命だ。」
「分かってる――。――千景。千鶴ちゃん、どうするの?」
投げ掛けられた疑問に、千景はゆっくりと閉じていた目を開けた。
「あの女は既に我らの手を離れた。生きようが死のうが関係のないことだ。」
それに、と。
一旦、千景が言葉を区切る。
「時代は流れた。我らの血も終わらせるべきかも知れぬな。」
「頭領がお決めになった事であれば、我らは最後まで従うのみ。」
何となく千景の返事が分かっていたのか、天霧はそう答える。
「それで良いの?」
心配そうに見上げて来る綾女に、千景は笑う。
「何でお前がそんな顔をする。喜べ。他に女は娶らぬと言っているのだぞ?」
「それは――、そうだけど。」
何とも言えない感情に、綾女は言葉に詰まる。
「不知火。お前は好きなところに行け。行きたいところがあるのではないか?」
「は――?あ、あぁ――。そりゃ原田には会ってケリをつけてぇがよ。」
「ならば、そうするが良い。天霧、お前はどうする?」
千景が問い掛ければ、天霧は当然のように答える。
「私はこのまま二人の側にいますよ。親が必要でしょう?」
「――ッチ。お節介め。」
「それに。留守番役がいなくては北斗をどうするのです?」
その言葉に、千景は眉根を寄せる。
「――お前。」
「土方に会いに行くのでしょう?行って来なさい、風間。」
「千景?土方さんと千鶴ちゃんに会いに行くの?」
二人の会話に、綾女は思わず声を上げる。
「鬼の成れ果てを見てやろうと思っただけだ。一緒に行くか?」
「うん――。」