第21章 沈む太陽と命のサイクルと、哲学者の振りをする私
彼女の涙を流す姿に欲情して、その意味に嫉妬をした――。
Ep-21:沈む太陽と命のサイクルと、哲学者の振りをする私
「さて、綾女ちゃん。僕達はキミの正体がいまいち分からないんだ。彼はキミを人間だと言ったと土方さんから聞いたんだけど――。あの鬼達とは仲間なの?」
目の前に座った沖田に、綾女はその黒い目を向ける。
「――あたしは人間だよ。千景に助けて貰ったの。それから屋敷に置いて貰ってただけ。」
「助けた?」
綾女の言葉に、原田は首を傾げる。
千景が助けたと言う事に、納得が行かないのだろう。
「そうよ。あの日からあの人があたしの全てなの。だからあたしは千景の枷になるぐらいなら今ここで死ぬわ。」
「あ、コラ!」
その場にあった原田の脇差しを掴めば、綾女は自分の喉に突き付ける。
慌てて原田と沖田がその腕を掴む。
「離して!」
「離したら自害すんだろ~が、お前!俺ァ、女が目の前で自害すんの見る趣味はねぇぞ!」
「じゃあ見なきゃいいでしょ!」
「漫才してるんじゃないんだよ、綾女ちゃん!取りあえず落ち着きなよ!」
その瞬間、沖田の手から血が出ているのに気付く。
「沖田さん、手!」
「え?あぁ。綾女ちゃんが離してくれないから切れちゃったじゃん。」
血を見て力が緩んだ瞬間に、原田が脇差しを取り上げる。
沖田は自分の手から流れる血を舐めながら言う。
「――ゴメンなさい。」
シュンとなる綾女に、沖田は苦笑しながら頭を撫でた。
「――嘘だよ。なんか調子狂うなぁ。別に綾女ちゃんが悪い訳じゃないよ。僕が勝手に止めたんだし。それに脇差し投げてた左之さんが悪いよね。」
「俺かよ!」
その様子にクスクスと綾女は笑った。