第20章 希望の影を追いかけて、絶望の過去に追いかけられて
――君や来し我や行きけん思ほえず、夢かうつつか寝てか覚めてか――
Ep-20:希望の影を追いかけて、絶望の過去に追いかけられて
薄暗い意識の中で、もがいている自分がいた。
感じるのはほんの少しの同情と、自分でなくて良かったと言う安堵。
人間って勝手だ。
『綾女――。村の為に、鬼の元へ行ってくれるな――?』
別に村の人間なんてどうでも良かった。
鬼が救ってくれるなんてバカな話信じてもいない。
でもここから抜け出せるのならば、何でも良かった。
だってあたしは消えてなくなりたかったのだから。
でも死ぬ勇気はない。
その鬼とやらが殺してくれるなら、と秘かに願った。
けれど――。
鬼は私を生かしたのだ。
生きる意味を与えてくれたのだ。
『勝手にいなくなってみろ。地の果てまで追い掛けてやるぞ。』
それは微かな希望。
あの言葉は真実なのだろうか。
「――ん。」
綾女は靄が掛かった頭で、目を開く。
一番に目に入って来たのは、赤――。
「――原田、さん。」
「おう、覚えてたか。驚いたぜ。お前、総司や土方さんと知り合いだったんだな。」
起き上がろうとすれば、横から左之助が背中を支えてくれた。
「有難う。ここ、は?」
「俺たちの屯所だ。お前、微妙な立場みたいだな?」
縄こそ掛けられていないが、左之助の視線に苦笑する。
彼の視線は屋根裏をさしていた。
「――殺す?あたしを。」
「それはキミの返答次第、かな。気分はどう?」
話を遮るように入って来たのは、沖田さんだった。