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鬼の嫁入り【薄桜鬼】

第10章 そうだね、僕らは幸せになりたくてここまで来た


「――で。貴様は何だ?人間の来る場所ではないぞ、ここは。」

千景は内心驚いていた。
ここは鬼の里。
人里からは遠く離れている為、人間が訪れる事などまず無い。
それなのに。
気配を感じて戻って見れば、軽装の女子が一人。(プラス一匹)
しかも。
第一声が『山姥』と来たものだ。

「あ、いや。道に迷いまして――。良かったら今晩一晩泊めて頂けないかなぁ、と――。」
「断る。」
「早!!ねぇ、ちょっと悩んで!お願い!」

あっさりと切り捨てる千景に、綾女は縋る。

「大体お前は何だ?ここは人間が来る場所ではないぞ?」
「って言われてもあたし人間ですよ。大体、貴方こそこんなとこで何してんですか?世捨て人?」
「――お前、失礼だと言われないか?」

呆れたように呟けば、突然綾女のお腹が轟音を立てた。

「――お腹空いたんですけど――。」
「はぁ――。何なんだ、お前。」

千景は怒る気を無くせば、さっさと家に上がる。

「――お邪魔しました。」

やっぱりダメか、と綾女は渋々歩き出す。

「――何をしている。早く上がらないと閉めるぞ。」
「?!いいの?!」
「夜中に女を放り出す程、鬼ではない。」
「有難う!あたし、綾女!この子は行きずりのワンちゃん!」

綾女の説明を補足するように柴犬がワン!と鳴いた。

「お前の犬じゃないのか?」
「違うよ。偶然会ったの!って言うかお前じゃないってば!綾女!」
「――千景だ。風間千景。」

それが忘れもしない、二人の出会い。

「千景ってここで一人で暮らしてるの?何で?やっぱり世捨て人?」

食べながらマシンガントークをかまして来る綾女に、千景はため息をついた。

「頼むから、少し黙れ。お前、口から先に生まれて来たとか言われないか?」
「さぁ?あんまり人と話したコトないし。」
「――?」

不意に紡がれた言葉に、千景は違和感を感じた。






Ep-10:そうだね、僕らは幸せになりたくてここまで来た
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