第9章 冗談めかしたその言葉の、なんと悲しい響き
それは二年前のおはなし。
Ep-09:冗談めかしたその言葉の、なんと悲しい響き
「ドコですか、ここ――。」
綾女は山奥を彷徨い歩いていた。
「お腹空いた――。」
綾女が呟くと横を歩いていた柴犬がくぅ~ん、と鳴いた。
「お前もお腹空いたよね?ゴメンね、何もなくて。」
そう言えば柴犬は座り込んだ綾女の頬を舐めてやる。
「――ありがと。ん~、どうしよっかな?」
綾女が再び立ち上がって歩き出せば柴犬も後ろをついて来る。
その様子に綾女は笑った。
「――あ、煙?人がいるのかな?」
しばらく歩けば煙が上がっているのが見える。
綾女はそれを目指して歩き始めた。
しばらく歩くと一件の民家が見える。
こんな人里離れた山奥に不釣り合いな民家。
「――やっぱり山姥かな?」
思わず柴犬に問い掛ければ首を傾げられた。
だが日も暮れかけているし悩んでいる暇はない。
綾女は意を決して声を上げた。
「すいませ~ん!!」
しーん――。
「えぇぇ?!まさかの留守?せめて山姥とかでもいいから出て来てよ!」
思わぬ展開に綾女は思わず地団駄を踏む。
その時。
「――おい、貴様。」
「きゃ~!!ゴメンナサイ、嘘です!山姥は勘弁してください!!」
後ろからいきなり声を掛けられ綾女はパニックに陥る。
恐る恐る後ろを振り向けば綾女の様子に目を見開いた1人の男性。
綺麗な、赤い目を、してた。
「山姥?」
「激しく失礼なやつだな、お前。」
それが貴方とあたしの出会い。