第2章 三日月宗近という刀
「……」
しん、と鍛刀場が静まりかえる。
歌仙がちらりと愛希を見ると、まるで愛希だけの時間が止まっているように動かない。
否、手先が微かに震えている。
「……あ、……初めまして三日月さん。 うちの名前は愛希。 どうぞよろしく」
「ああ、よろしく頼む」
心地のよい声。
しかし、愛希の顔色は優れない。
歌仙は「小夜!」と大きな声を上げた。
「どうしたの?」
青い髪を揺らしながら顔をのぞかせた小夜。
歌仙は小夜に三日月を案内するように頼む。
小夜は「分かった」とうなずき、三日月を広間まで案内した。
「……はは。 すみませんなあ、歌仙」
「大丈夫? 外に移動する?」
その問いかけに愛希は片手を上げ「平気」とだけ答えた。