第2章 三日月宗近という刀
「さてと……歌仙、資材」
「量はどうする?」
愛希が本丸に来てから、早一か月。
イベントで手に入る刀剣はどうしても手には入らぬが、鍛刀で手に入る刀剣はほとんど手に入った。
今の主戦力は初期刀の歌仙、初鍛刀の小夜、初太刀の一期一振だ。
「全部九百五十」
「はい。 絵馬は?」
歌仙の問に、愛希は「富士」と答え、受け取る。
その姿は、いつもの黒い目隠しは取らないものの、白い綺麗な装束に、赤い紅を唇に塗っている。
愛希曰く、「初対面の神様に無礼がないように」らしい。
「今日こそ『三日月宗近』が出てくれると、いいんですけどなぁ……」
「主、強気で行こう。 願望になってるよ」
歌仙は苦笑交じりに言うと、愛希の背中をゆっくりとさする。
「そうやなぁ」と返事をし、愛希は資材を渡した。
『04:00:00』
その時刻が一瞬表示され、一秒一秒と、数が小さくなっていく。
富士絵馬の効果があったのかもしれない。
愛希は意気揚々と、手伝い札を使った。
「歌仙」
「なんだい?」
愛希が歌仙の名を呼ぶと、歌仙は訊きかえす。
「三日月宗近って、どんな刀なんでっしゃろなぁ……」
その問に、歌仙は「とても美しい刀らしいよ」と答えた。
愛希は「楽しみですなぁ~」と言いながら、出来上がりを待った。
ふわりと桜が舞い、人影が形成される。
「三日月宗近。 打ち除けが多い故、三日月と呼ばれる。 よろしくたのむ」
綺麗な男の人の声が、鍛刀場に響いた。