第3章 馴染みたい三日月、避ける審神者
「……」
襖をきっちりと閉め、愛希は鏡を取りだす。
目隠しをさらりと外し、布で左目をおさえた。
力をこめると、一瞬だけ色彩が映る。
黄色い三日月が宿った、真っ黒な瞳。
「っ!」
目隠しを投げると、鏡に巻き付き、床に落ちる。
パリーンッ、と音がし、鏡が割れた。
「か、母様の……」
やってしまった。
目隠しがないため、不用意に手をのばしては危ないだろう。
「ぬ、ぬの……」
「これか?」
「あ、ありがと……」
そこまでやり取りして愛希はハッと気づく。
「おぬし……まさか」
「!?」
差し出された布を奪うように取り、目をおさえる。
「……うちの目ぇ、三日月はんに見られてしまいましたか……」
「静風……なのか?」
その言葉を聞いた瞬間、愛希は「出てって!」と声を荒げる。
「待ってくれ」
「いいから! お願い!」
三日月は「すまない」とだけ言い、部屋から出て行った。