第1章 初めまして、審神者さん
「はあ……だから出陣はいややって申したんに……」
盛大なため息をはきながらも、打粉をポンポンするのをやめない。
愛希の隣には、先ほど手入れを終えたばかりの小夜がちょこんと、座って居る。
「歌仙、痛いところは?」
「もう特に。 大丈夫だよ」
そう言って歌仙は軽く微笑む。
愛希は「よかった」と胸をなでおろした。
「はあ……」
「うっ」
ため息をつくたびに、女性とこんのすけは肩をびくりと揺らす。
ごめんなさい! と謝る二人……否、一人と一匹を見て、愛希は思わず口元に手をそえ、肩を揺らした。
「もういいですよ。 さ、小夜と歌仙にはあまり負担かけないように鍛刀でもしなくちゃね……。 歌仙、治った?」
「ああ」
愛希の問に、歌仙はうなずく。
立ち上がり、両手を上げて伸びをすると、小夜もつられたように立ち上がった。
「あら? 二人とも手伝ってくれるんです?」
「うん。 あなたを一人にしたら、なんだか不安だから」
小夜はそう言いながら、着物の袖をひっぱり、「こっち」とぶっきらぼうに言った。
そのぶっきらぼうさが可愛らしく、愛希は思わず、小夜の頭を撫でた。