第1章 初めまして、審神者さん
「刀を、選べと?」
「はい。 右から、歌仙兼定、陸奥守吉行、蜂須賀虎徹、加州清光、山姥切国広となっております」
不思議な所に連れてこられた愛希は首を傾げながら尋ねる。
説明してくれたが、いまいちよく分からない。
「うちにはよく分からんですわぁ……」
肩をすくめる愛希だが、これは選ばないといけなさそうだ。
愛希は「これで」と言い、一振りの刀剣を手に取る。
桜がふんわりと舞い、人の形を形成させる。
「僕は歌仙兼定。 風流を愛する文系名刀さ。 どうぞよろしく」
歌仙は愛希を見て驚いたように目を見開いたが、すぐにとろけそうな笑顔になり、ぽんっと頭を撫でた。
「ふふ。 まぁた綺麗な方が来たこと」
クスリ、と小さく肩を揺らして笑う愛希。
歌仙は褒められたことをよくし、すっかり愛希に懐いた。
_「それじゃあ、次は鍛刀ですね」
女性は立ち上がり、愛希を連れて鍛刀場へ向かった。
歌仙は愛希に「大丈夫かい?」と心配するも、愛希は「大丈夫」と言って一人で歩いている。
その足取りはしっかりとしたものだが、鍛刀場の段差につまづき、転んでしまう。
「おっと!」
歌仙がとっさの判断で支えたため大事には至らなかったが、一人でこの本丸内を歩くのは少し危ないかもしれない。
そんなこんなでようやく着いた鍛刀場。
「鍛刀してみましょうか。 まずはこのまま」
「はぁ……。 資材もありますし、大きな賭けに出ても……」
形のいい顎に手を添え、思案する愛希だが、ここは女性の言う通りに鍛刀を開始した。
二十分の時間が表示され、一刻一刻と減って行く。
「それでは、この手伝い札をおつかいください」
愛希は言われるがままに手伝い札を使った。