第1章 初めまして、審神者さん
「はあ……審神者、ですか?」
堺ヶ原愛希は和室で狐の式神、こんのすけにお茶を出しながら話を聴いていた。
隣には巫女服を着ている、キリッとした女性。
女性はすっとお茶を飲むと口元をほころばせた。
「ええ。 こちらの独断で、貴方には審神者になってもらうしかないと判断しました」
そう言うと、女性はまっすぐな瞳で愛希を見た。
こんのすけはお茶菓子にと出された自分の羊羹を平らげ、女性の羊羹に狙いを定めていた。
女性は気付かず、そのまま話を続ける。
「それに、その格好でこちらで生活していても不便でしょう。 先ほど説明した刀剣男士は審神者を慕い、きっと目の見えない貴方でも……」
「見えない、と言う訳ではないんですけどなぁ……」
愛希はそんなことを言いながら、目隠しをしている布にそっと触れる。
真っ黒な布は一見光を全て遮断しているように見えるが、当の本人である愛希にとってはこれがなければ、一寸先の書物まで手をのばせない。
「まあ、そういうわけなので」
どういう訳だ、と横から突っ込むこんのすけは頬をもごもごと動かしている。
ふと女性がお皿を見ると、羊羹は跡形もなく消えていた。
どうやらやられてしまったようだ。
「ああ……」
残念そうな顔をする女性は、愛希の視線に気付き、ごほんとわざとらしく咳をする。
「ささ、貴方は今日から審神者になっていただかなければ、困るんです!」
「あらあら……」
困ったように眉を下げる愛希を無視して、背中を押した。