第12章 衝動
「ハァ....ハァ....」
私は何とか縋る思いでキッチンまで這い出てきた
喉の渇きでどうにかなってしまいそうだ....
私は急いで、蛇口を捻り
コップに水を注ぐ
「ゴクッ....ゴクッ....はぁ....」
私はそれを一気に飲み干した
しかし、その潤いは一時的なもので、直ぐに喉は新しいモノを欲する
「なんで....ッ....」
こんな事生まれてはじめてだ....
水では喉は潤わず
飢えて苦しむ....
こんなのまるで....ッ....
バリンッ!!
「ッ!!」
手に持っていたコップを落としてしまい、それは床に当たり粉砕する
しかし、私もその場に座り込む
ふと、指を見るとガラスで切ったのだろう傷が出来ていた
血が滲む....
ーーーードクンッ
またも動悸が早くなる
何故だろう....
今まで何とも思わなかった血に対して
私は今一瞬でも、"飲みたい"そう感じてしまった
「こわい....ッ....」
私ははじめての衝動に恐れ、体を抱きしめる
ーー飢えが限界に達するとそのヴァンパイアは、本能のままに血を吸い尽くす悪魔に変わる
かつて聞いた言葉を思い出す
今まで私は飢えを感じた事は無い
その理由が何故かなんて私には分からないし
周りの人も何とも言わなかった
ただ、普通のヴァンパイアより血に疎いだけ
私はそう思っていた
「なんで....今更....ッ....」
苦しい衝動に意識が朦朧とする
そんな時....
「おい!どうした!」
扉を開けて入ってきたのはルキくんだった
彼は、苦しむレナを見て驚いた顔をする
「ッ!!」
私は彼の顔を見るなり、目に溜まっていた物が溢れ出した
彼はすぐさま私を強く抱きしめてくれた
「大きな音がして来てみれば....
どうしたんだッ」
私の目からは大粒の涙が溢れる
こうしている今も喉は血を求め疼く....
私は精一杯、声を出した
「ッ....のどが....かわいてッ....くるしいよッ....」
レナは力なくルキにもたれ掛かる
「ッ!!」
ルキは苦しむ彼女を見て、歯を食いしばる
彼が彼女にしてあげれる事はただ一つだったーーー