第11章 甘美
「あれっ?」
キッチンへ行くと丁度そこにはルキの姿があった
「ルキくん」
声をかけると彼は静かに振り返る
手元を見ると何かが入ったコップをかき混ぜているようだった
とても美味しそうな香りがする
「どうしたんだ?」
彼はコップをテーブルに置く
「....ちょっと水が飲みたくて....」
私は辛みのある口を冷やそうと冷蔵庫を開ける
「ん?....どうかしたのか?」
少し様子のおかしい私に気づいたのだろう
「えっと...実は....アズサくんの唐辛子を食べちゃって....」
私は苦笑する
一方ルキはやれやれといった感じにため息をつく
「はぁ....全く。アズサもアズサだが、お前もお前だ。
明らかに見て怪しいだろうに」
「う、うん....」
痛いところを言い当てられ
私はコップに入れた水を一気に飲みほす
少しの間沈黙が続いた
しかしルキはまた、ため息をついてキッチンの上の棚を開けて何かを取り出す
「....何が食べたい」
「えっ?」
「何が食べたいのかと聞いてる
あんな辛いものを食べてほっておくと舌が麻痺するぞ」
心を言い当てられたようだ
彼もよく知っているのだろう殺人的なあの辛さを
ルキは手元の適当な材料を出す
「え、大丈夫だよ。自分で作るから....」
「はぁ....どうせ、ろくな物も作れないんだろう?」
「!....そ、それは....」
図星で動揺する私を見て、ルキはふっと笑う
何だかからかわれてる様な....
「いいから。何でも言ってみろ」
私は彼の言葉に甘える事にした
「じゃあ....ワッフル....」
「ワッフルか。分かった。少しそこで待っていてくれ」
私の返答を聞くと彼は直ぐに作業に取り掛かる
(こうゆう時のルキくんって....凄く新鮮な気がするな....)
普通の時は彼の自然体を見る事があまり無い為、私は料理をする彼の後ろ姿を見てなんだか嬉しい気持ちが込み上げてきた