第11章 甘美
「ゴホッゴホッ....うぅ....」
廊下に酷い咳が響き渡る
私は口の中が辛くて死にそうだった
一時間前
アズサくんが味見して欲しいと言って持ってきたのは得体の知れない真っ赤な何かで
私はそれを食べ物だと認識するのに少し時間が掛かった
アズサくん曰く、唐辛子のせパンケーキだそうで
コウくんが買ってきた甘いパンケーキが口に合わない彼はそれに唐辛子をのせてみたというのだ
彼が辛党なのは知っていたがこれまでとは思っていなかった
この時点ですでに危険なのは分かっていたのだが....
どうやらアズサくんは誰かに共感してもらいたかったみたいで私にこれを試食してくれという
「これ....美味しいの?」
私は流石に抵抗があり、疑いをかける
しかし、彼は満面の笑みで
「うん....すごく美味しいよ」
その可愛らしい笑顔に負けて私はそれを1つ口に運んだ
「はぁ....まさか、あんなに辛いなんて....」
そのパンケーキはもはや唐辛子の味しかせず、本当に口から火が出そうな程辛かった
アズサくんの味覚には一生共感出来そうにないなと心から思った
そんな事もあり、私は口直しに水分と甘い物を求めてキッチンへ向かった