第10章 憎悪
カールハインツ....
祥匙は何百年も昔から彼の王座を狙っていた
彼は月を恨めしそうに睨みつける
「お前の父はこのヴァンパイアの歴史の中で最も能力のある王だ。私もそれは認めている....だが、この世を手に入れるのはこの私だ」
「はっ、親父を殺して王になりたいんならなればいいだろうが。
まぁ、お前にアイツに勝てる力があるとは思えないけどな」
「あぁ。そう簡単では無いことは友である私がよく知っている。
だから....こんな回りくどい事をしているのだ」
祥匙の体から強い魔力が発せられる
アヤトは思わず、息が出来なくなる
「ッ....!!」
祥匙はゆっくりとアヤトの前まで来て、見下ろすように彼を見る
「我々には....切り札がある」
そして、アヤトはふと思った
何故、こいつは俺にこの事を話すのだろうか
この疑問を尋ねる前に祥匙は口を開く
『お前がレナの血を手に入れ
カールを殺せ』
その言葉で全てを理解する
だが、それに乗るほど彼は愚か者ではない
「はっ、自分の娘もその為なら安売りすんのかよ」
「レナの運命は産まれた時から、ずっと決まっている。あの子は永遠に私の可愛い娘だよ。
それに、お前は昔から一番になりたいと言っていただろう。
私はシュウではなく、妹の息子であるお前にその手伝いをしてやろうと言っているんだぞ?」
かつてのコーデリアの言葉を思い出す
アヤトは思い出したくないというように強く歯を食いしばった
「お前、俺様をなめてんのか!?」
「アヤト
勘違いするな。これは命令だ。
それでも、従わないのなら....
カナトやライト....あの人間の小娘も殺すぞ?」
「!」
アヤトは動揺する
彼は最近、生贄として連れてこられた使用人の女と関わっていた
もちろん最初はただの餌としてしか見ていなかったが、今ではそれ以上の感情が芽生えている事をもう彼も否定出来なかった
祥匙は不敵な笑みを浮かべる
「お前!!あいつらに何する気だ!?」
「貴様が素直に従うのなら彼等に手は出さない
ただ、もしどうしても彼女の血を吸い王の座を奪うのを拒むのであれば....もう一つ貴様に手段を与えてやろう....ーーーーーー
「!」
祥匙は耳元で悪魔の言葉を囁いた