第10章 憎悪
「はぁ...」
レナはリビングに居た
口を開けばため息が漏れる
昨日のコウとの会話を思い出し、眠ることもできず一日中こんな調子で過ごしていた
静かに手に持つ紅茶を眺める
ーーコウくんは...足掻いて、足掻いて生き抜いてきた
そうしないと、生きていけないから...
一方、私は何も知らないまま示された道をずっと歩き続けてきた
余計な事は考えず、言われるまま生き流してきた
私と彼等との違い....
環境の差とは運命を左右する
私に一体何が出来るのだろうか....
「レナさん....」
「!」
ふと名前を呼ばれ後ろを向くとそこには不思議そうな顔をしたアズサが居た
「ぼっとして....どうしたの?」
アズサくんは何度も私を呼んでいたみたいで反応しない私を心配そうに見ていた
「うんん。ごめんね大丈夫」
私は精一杯の笑みを浮かべる
きっと、今の自分の顔は酷く歪んでいるだろう
「...コウに何か言われたの?」
「えっ...」
知るはずのない彼から尋ねられ私は動揺する
「昨日..コウの部屋から君が出てくるのを見たから...」
アズサくんは私の横に腰掛ける
そして、私の腫れた手首を少し羨まし気に見つめる
「コウにされたの?赤く腫れて...とても痛そう...ふふっ」
アズサくんは私の手首を取り微笑む
しかし、その表情は突然不安気に変わる
「あっ...でも、この事ルキが知ったら...きっとコウ...怒られる」
「ルキくんが?」
何故、ルキくんがコウくんを怒るのだろう...
いつもみたいに節度を守れと言う事なのかな?
私の腫れた腕を口元まで持って行く
「アズサくんッ....」
彼は私の腕を嗅ぎ、満足そうに顔を赤らめる
「君の匂い...凄くいい...」
今にも噛み付いてきそうな彼から必死に腕を払う
「あっ...ごめんね。本当に君の血が...美味しそうだったから...」
本能のままに生きるヴァンパイア
そんな彼らの衝動を誘発する血..
私は少し怖くなった
「...でも、大丈夫。君の血は絶対に吸ったらダメだって...ルキにいわれてるから...」
「!」
その本能を抑えつけてまでルキくんに従う彼等にとても違和感を感じた
何故...ルキくんは...
彼のことを知れば知るほど、胸が苦しくなる