第8章 困惑
ーーーッ!!
夢から覚めたルキはハッと目を開ける
ソファーに持たれる彼の額には少し汗が滲んでいた
「ッ....くそ....またあの夢か....」
先程見た夢を思い出し、額を手で抑える
最近....悪夢ばかり見ている気がする....
ルキはふと1人の少女を頭に浮かべる
(あいつが、来てからか…)
そして、悪魔の囁きを思い出す
『お前とレナは許婚だったのだから....』
ルキは爪が食い込むほどに強く、強く、手を握り締める
ーーーガチャ
「あれ?ルキくんじゃん。珍しいね
こんな所で寝てたの?」
扉の方を見ると、外から帰ってきたであろうコウが立っていた
「少し....な」
寝起きだからだろうか、少しルキがぼっとしているように見えた
「ふぅーん....」
コウはルキの前のソファーに倒れ込む
「彼女、まだ出てこないみたいだね」
コウは寝そべりながら顔だけルキの方に向ける
「....あぁ」
カールハインツからレオの事を聞いた日からレナはずっと部屋に篭もりきっていた
中からは啜り泣く声だけが聞こえてくる
「様子....見てきてあげなよ。ルキくん」
コウの言葉にルキは少し考えこみ、ため息を漏らす
コウはふっと笑う
すると、コウの片目が赤く色づいていく
だが、ハッと思い立って彼は目を瞑る
ルキは一体、何を思っているのだろう....
ずっと昔から、彼の考えは理解できない
でも、ただ分かることは
目の前に居るこの兄は絶対に俺達の敵になる事は無い
だから、この"眼"を彼には使いたくない
ーーけれど....一つだけ気掛かりなのは....
「....行ってくる」
そう言ってルキは部屋を出た
そんな彼の背中は孤独を全部背負ったみたいで、俺は思わず目を逸らす
俺が気掛かりなのは....
彼が自分自身を傷つける選択をするんじゃないかって事....ーー