第5章 無知
私がいくら問いかけても、彼は何も言わなかった
まるで....地獄絵図だ....
燃え盛る炎と人々の叫び声が頭に残ってる…
こわい....
震える彼女をルキは見つめる
「あれが....この世の現状だ」
「え....」
無口だった彼が呟くように話し始める
「....ヴァンパイアの王族同士が争いを始めてから、この世界の統率が弱まり、様々な所で内乱や戦争が起こっている。
それは、一般の者達も同じだ。
今、この魔界にはさっきの様な惨劇が繰り返されているんだ....
俺達がこうしてる今もな....」
「そんな....」
自分が何も知らなかった事に気づかされる
私の見てきた世界はどれだけ狭いものだったのだろうか....
先程までの悩みを断ち切るほど、その衝撃はレナにとって辛いものだった
「....お前はもう忘れろ
夜崎家のお嬢様には関係の無い問題だ」
ルキは少し冷たく言い放つ
確かに、今初めて知ったような私には何も出来ないかもしれない....
けど、そんなふうに言われるのは....
「着いたぞ」
「!」
顔を上げると
目の前には清楚な雰囲気の大きな屋敷があった
見慣れない家に私は驚いた
やはり、彼もどこかの王族なのだろうか?
扉の前に立つと、自然に門が開く
すると、玄関の前で佇む男性が1人こちらに手を振っている
「ルキくん、おかえり!」
彼は私達の所に走ってくる
「あぁ」
近くまで来て私はハッとする
彼はとても綺麗な顔をしていて、
目はまるで、お人形さんみたいに輝いていた
しかし、それと同時に微笑みの裏から見える牙と闇もレナは見逃さなかった