第28章 幸福
屋敷の裏のバラ園を抜けた先にある別館は花嫁の控え室として使われており
そこでは、夜崎家のメイド達が揃って花嫁の準備に精を入れていた
レナはほとんどされるがままで、メイド達はとても楽しそうに小物や髪型を合わせている
「みんなありがとう」
「いえいえ!私達ずっとこの日を楽しみにしていたんです」
彼女達は、レナが夜崎家にいた頃から仕えてくれていて、レナが居なくなった後もずっと信じて待ってくれていた。
「レナ様、とてもお似合いですよ」
レナが身につけているウェディングドレスは、目の見えない彼女に代わってルキが選んだ物で、派手すぎず上品な雰囲気の物だった
「さすがルキ様、レナ様の事がよく分かってらっしゃるわね」
照れるレナを見て、メイド達も幸せそうに微笑む
「でも、ルキのタキシード姿、見られないのが残念.......」
そう、彼女は未だ視力は戻らず、記憶がハッキリと戻ったわけでもない
それどころか今日の結婚式も車椅子での参加になる
しかし、それでも彼女達は前に進むことを選んだ
ーーーあの日…ルキと私がお互いを分かり合えた時
「俺と結婚してくれ」
ルキはそう一言私に告げた
私は一瞬喜びと共に不安がよぎった
今の私は自分の足で立つことも出来ず、大好きな貴方を見ることも出来ない.......
でも、彼との1番大切な記憶を失っても、自分の身体は強く彼を求めていた
何よりそんな不安を打ち負かすように、彼は私を抱きしめてくれる
そして、私がいることで彼もまた満たされている
レナは強くルキを抱きしめ返した
ーーーールキを幸せにしたい