第26章 分かち合い
「...本当の、幸福って何なんだろうな」
シュウは窓のそばで、ルキを乗せたリムジンが走り去っていくのを見ながら呟いた
「さぁ...それは人によって感じ方も捉え方も違います
けれど、きっと彼等なら答えを見つけるはずですよ」
レイジの言葉にシュウは意外とでもいうように微笑が零れた
「ふっ...何だかんだ、お前もレナが心配なんだな」
レイジは否定せず、認めるように顔が緩んだ
そう、逆巻家みんなが彼女の事を本当の家族の様に思い、接してきた
明るく、無邪気だったレナは、自然と兄弟達を和ませ、歪んでいた永遠に続く生を悪くないと思わせてくれた
彼女が居なければ、今の逆巻も自分達兄弟も居ないだろうと強く思う
「まぁ、私達の幸福とは、この魔界がより良くなること...そのためには貴方にも、もっと働いて頂かないといけません」
ドンッ!
シュウの目の前に大量の書類が運ばれる
「げっ...」
シュウは嫌そうに顔を歪ませる
そんな中、ふとレイジはあと一つ気がかりな事を思い出す
「”父上”は...どうなさっているのでしょうか」
レイジの言葉にシュウは、顔色を変える
夜会の後、シュウはカールハインツから逆巻当主の座を受け継いだ
しかし、受け継がれるはずの、王の力はまだシュウは手にしていない
「『まだ、私にはやるべき事がある』とか言ってたな」
その日以来、カールハインツは屋敷にも居らず、行方をくらましていた
「全く...どこへ行ったのでしょうか」