第25章 すれ違い
リビングの扉の向から物音がした
2人は顔を見合わせ、急いで扉を開ける
しかし、そこには誰も居ない
けれど、廊下の角を曲がる車椅子のタイヤが視界に入り
2人は困ったように表情を険しくした
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「はぁ...はぁ...ッ」
レナは急いでその場を離れようと車椅子を動かす
彼女はルキが部屋から出ていった後、彼を見送ろうと外に出たが皆の話が耳に入ってきて、扉を開ける事が出来なかった
『また二人の時間を奪われちゃったんだから...』
コウの言葉が頭の中で繰り返される...
「私は...またルキを...」
バタンッ!!
レナは息を切らしながら部屋に入る
ずっと、聞けなかった...
私が何者なのか、どうして記憶を失ったのか、たまに頭に浮かぶ恐ろしい男の姿についても
聞いてはいけない
そんな気がしていた
けれど...
このままでは駄目だ
レナはそう思い、強く目を閉じる
真っ暗闇の視界を受け入れるように、彼女は自らの記憶を辿る
彼女は必死に頭の記憶と向き合う
「思い出さなくちゃ...ッ」