第25章 すれ違い
ガチャ
リビングの扉を開けたのは、スーツに着替えたルキだった
「あっれールキくん、今日も早いね」
「また、クソニートのお使いかぁ?」
リビングではコウとユーマがくつろいでいた
コウは鏡と向き合いメイクの途中らしく
ユーマはテレビを見ながら角砂糖を頬張っていた
「まぁ、そんなところだ」
ルキは机の上に鞄を置き、中身を整理する
そんな中、ユーマは彼をちらっと見る
「おい、ルキ
そんな毎日、働いて大丈夫かよ」
ユーマは少し心配していた
レナが目を覚ましてからというもの、ルキは外で忙しく働いている
「仕方ない。今の魔界にはより早い変化が求められている
それに、俺は少し休めば疲れはとれる」
「つってもよ....」
しかし、心配しているのはユーマだけではなくて....
「そうだよルキくん!
昨日だって帰ってくるの遅かったし、それに、レナちゃんとの時間だってもっと....」
「ッ....」
レナの名前を出した途端、ルキの手が止まる
コウは少し後悔した
そんな事....ルキだって分かってるのに....
空気が重くなる中、ルキは二人に向かって少し申し訳なさそうな顔をする
「お前達には苦労をかけてすまない....
俺が居ない間、レナを頼む....」
ルキの言葉と辛そうな表情に2人は何とも言えないもどかしさを感じた
いってくると言い、ルキは玄関を出た
ルキの居なくなったリビングでは、重たい空気が続いていた
「ルキの奴....本当に大丈夫かよ」
コウは鏡を置いて、憂いを帯びた顔をする
「ルキくんも、きっと動揺してるんだよ」
先ほどの悲しそうなルキの顔を思い出す
あの顔を2人は見たことがあった
レナが初めてここに来た時も、彼は1人抱え込み、ひどく辛そうだった
「当然だよね....せっかく取り戻した2人の時間を、また奪われちゃったんだから....」
ルキが夜会のことを話したがらない理由もきっとそこにあるのだろう
出会い、別れ、そして喪失....
二人の時間は、あまりにも少ない
このままこの連鎖が続けばレナの記憶は混乱し
ルキの心は壊れてしまうだろう
2人の間に沈黙が続いていると....
ガタッ!!
「!」