第22章 存在理由
ずっと言われ続けてきた
『一番じゃない、お前なんて価値は無い』
そして泳げなかった俺は何度も池に落とされた
いつしか俺は...全てを諦め始めていた
あの女は俺達息子を愛してなんていない
アイツの目に映るのは、1人の愛する男だけ....
そう思うと、コーデリアの兄であるこの男も同じなのかもしれない
こいつらはカールハインツという男に向けられた感情だけで動いてる
「ふっ....馬鹿じゃねーのか」
アヤトはぽつりと言葉を落とす
「なに?」
「俺は、お前の言いなりになんてならねぇ!!
第一、当主なんて面倒なもん継ぐのは長男って決まってんだよ」
「ッ!!」
「はぁ....?」
シュウは心底嫌な顔をする
「....それがお前の答えかアヤト
だが、分かっているのか?
前も言った通り、私はもはやお前達逆巻すらも手にかけるかもしれないぞ?」
祥匙は不敵に笑う
「っ!」
「なにを....お父様ッ...」
レナは父の言葉に驚く
しかし今の彼なら何をしてもおかしくない
「ふざけんな....!!
お前には何もさせねぇよ!
決めたんだ、全部俺が奪ってやるって
守りたい奴も、大事な奴も....!!」
アヤトの瞳はいつも以上に力強かった
「アヤト....」
ここまで言うアヤトは初めて見た...
しかし...
「ふっ...なんの力も持たないお前が私を止められると思うか?」
「なんだと...!!」
祥匙は余裕気に笑う
パチンッ
祥匙が1つ指を鳴らすと、突然1人の男が現れる
「!」
そして、その腕の中には1人の女が捕まっていた
「リマ....!!」
「アヤト....ッ」
囚われた彼女は怯えた様子でアヤトを見る
「何しやがる!!今すぐ、リマを離せ!!」
アヤトは祥匙に怒鳴り散らす
「全て守るのだろう?
自分の力で奪ってみるがいい」
「てめぇ!!」
祥匙の挑発にアヤトは冷静さを失い
そのまま、祥匙に剣を振りかざす
「ッ!!」
力で押し切ろうとするが、なかなか祥匙の剣を振り切れず、押し返されてしまう
「チッ!!」
「その程度か?
ならば...!!」
先程までとは違う圧倒的な速さで祥匙はアヤトの背後に回り込む
「なっ!!」
"殺られる"ーーーーー
誰もがそう直感した....