第19章 鎮魂歌
ー屋敷内ー
「ほんと助かったよー
ありがとうスバルくん♪」
「別に、俺は五月蝿い女どもを黙らせただけだ」
長い屋敷の中の廊下では、コウとスバルが会場から抜け出して来ていた
「やっぱり、俺苦手なんだよね
あーゆーお貴族様の宴ってさ
あんだけ美味しい物が食べれてるのは、一般人のおかげだっていうのに、あいつらの方が優遇されてるなんて、おかしな話だよねー」
「........」
「あ、ごめんねスバルくん」
スバルはどこか申し訳なさそうな目をする
別にコウはスバルを責めようとしたわけじゃ無かったけれど、そう聞こえてもおかしくない
「....別に
俺だって、この生活に浸ってきたが納得出来ない事だって山ほどある」
カールハインツの統治する世界は確かに理想郷に近いが、その政治の裏には自分の母親やコウ達みたいな被害者も居ることをスバルは深く理解していた
「あれ?」
スバルが下を向いているとコウが急に立ち止まる
「んだよ。あぶねぇだろ」
「ねーねー、スバルくん」
コウは一つの扉を指さす
「ここって何の部屋なの?」
「あぁ?」
指さす方を見ると、そこは一つだけ明らかに作りが違う大きな部屋があった
「あぁ....ここは祥匙の部屋だ」
「んー....
ねぇ、ここの中から血の匂いしない?」
「あ?」
コウに言われスバルは鼻を少し立ててみる
すると確かに、仄かな血の香りがした
「どうせ、誰かが血でも吸ってんだろ」
スバルは軽く溜息をつく
だが
「ねぇ、スバルくん
入ってみようよ♪」
「はぁ?」
コウは何処かわくわくしたように尋ねる
「俺、王様の部屋とか一回入ってみたかったんだ~
どうせ、スバルくんも会場に戻る気ないでしょ?」
「........」
確かに、スバルもあの雰囲気は吐き気がするほど嫌いだった
「....怒られても俺は知らねぇからな」
「よーし!スバルくん開けるよ!」
まるで探検中の子供のようにはしゃぐコウ
一方でスバルは少し身構えていた
彼自身この部屋に入った事はない
ガチャ....
「「!」」
2人は部屋の扉を開けるなり、体が固まる
「....何これ」
「....んだよ....これ....」
彼等の目線の先には、床一面に広がる血と
見覚えのある男が倒れていた