第19章 鎮魂歌
どこか名残惜しそうにゆっくりと唇が離れる
そして、ルキは自分の顔を見せないようにレナを胸に抱き寄せた
「....俺は、お前を夜崎に引渡した後、カールハインツ様の下で終わることのない虚無的な時を過ごしていた
あの方に身を捧げたにも関わらず、何度もこの生を終わらせたいと願った....
だが、それでも俺が今まで此処にあり続けられたのは....」
ルキの手がレナの頭を撫でる
『お前が居たからだ』
「ッ....」
「どれだけ離れていても、お前はこの世で生き続けている
その事実だけで、俺は....生きてこられた」
「ルキくん....」
彼の抱きしめる手が心地良い
「お前は俺の希望だった」
彼女が居ることでルキはどんな苦痛にも耐えられた
「だから....頼む....」
ルキくんの抱きしめる力が強まる
手が少し震えている気がする....
「お前は何があっても....
この世に生まれた事を否定しないでくれ....」
「っ....」
間違いなく彼女は母に愛されていた
それは母だけでなく、ルキの父からも
だから、ルキは彼女に後悔して欲しくなかった
あの屋敷で共に過ごした日々も
自分と出会った運命も....
「私は....
これからも、ルキくんの希望で居ることができるかな....?」
レナはルキの顔を見上げる
『今度は....ルキくんの傍で』
「っ....」
ふっ....駄目だな....
この世界で彼女は生きている
その事実だけで、充分だったはずなのに
俺ももう我慢出来そうにない
「あぁ
これからは....俺の傍にいてくれ」
ずっと告げたかった本心を初めて言葉に出来た
レナは思う
2人の空白の時をこれから新しく繋げていこう
これが今の私に出来ること