第19章 鎮魂歌
冷たく吹き付ける夜風が酷く無情に思えた
彼の話を聞いて、心に引っかかっていた偽りの記憶が綺麗に晴れていった
今までの私はどれだけ愚かだっただろうか
何も知らないで彼等が与えてくれた幸せに安住していた
心に生まれるボロボロの思いが溢れ出す
今の私の心に生まれたこの父への憎悪をどうすればいい....
そして....私はずっと、本当に永い時の間
この世で一番大切な人を傷つけていた
私は貴方にどんな罰をうければいい....
頬が冷たい
『レナ!』
「っ....」
はっとすると目の前でルキくんが私の肩を揺すっていた
「大丈夫か?」
私の頬に流れる涙を見て彼はひどく悲しそうな顔をしていた
「ッ....」
私は最低な存在だ
ルキくんを一番傷つけているのは....この私....
ぎゅっ....
「!」
レナはルキの胸に飛び込んだ
そして、彼女は我慢していた物を全て流すように頬を濡らす
「ごめんなさい....ッ....ルキくん....」
「ッ....」
ルキは謝る彼女を心底不安気に見る
「なぜ、お前が謝る」
レナは下を向き、止まらない涙を拭き取る
どうして、貴方は私を責めないの....
貴方は私の闇の運命に巻き込まれたのに....
レナはどんな辛い真実よりも
ルキを悲しませた事が、一番の後悔で
消えない罪だと思った
「...私が....私が貴方を一番傷つけたッ....だからーーーー
彼の綺麗な指が私の顎を撫でる
夜風が靡き、湖に映る月が揺らいだ
それと同様に水面には、唇を重ねた2人の姿が映る
ひどく優しいそのキスは溶け込まれてしまいそうなほど甘かった