第19章 鎮魂歌
月の下、ひっそりと踊りあかす2人の姿が見える
ひどくお似合いな2人には彼等だけの世界が作られていた
1度は引き裂かれた彼等が再び、手を取り合った
「もとから、俺らに勝ち目はない....か」
屋敷の二階の窓側の段に腰掛けるシュウ
彼はどこか安堵したように2人を見ていた
「まるで、ロミオとジュリエットだな
お前もそう思うだろ?"アヤト"」
「チッ....気づいてたのかよ」
闇の中から完全に気配を消したアヤトが歩いてくる
「殺気だってるからな
なんだ、俺を殺しに来たのか?」
「!」
「ははっ....図星か
どうせ、祥匙に変な要求でも持ちかけられたんだろ?」
「........」
ー前の満月の夜ー
『お前がどうしてもレナの血を手に入れられないのなら、他の選択肢を与えてやろう』
「あぁ?」
目の前の男は不敵に微笑む
『シュウを殺せ』
「なっ!!」
『まぁ、これは最終手段だが、
あいつを殺せたら、人質は殺さないでやろう」
アヤトは憎悪を剥き出しにする
「ふざけんな!
なんで、シュウが出てくんだよ!」
『お前は分からないだろうが、実質カールハインツに一番近いのはシュウだ
無気力なのが腑に落ちないが、シュウには父に似通った点がある』
祥匙は動向の掴めないシュウをひどく警戒していた
「チッ....」
さぁ、どうするアヤトーーーー
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「....知ってたのかよ」
アヤトはこの時祥匙の言ったことが何となく分かった
「あの男の考えそうな事だろ
あいつには王の座を得ることしか見えてない
全部、親父の掌の上だってことに気づかないくらいな」
「........」
「お前も、分かったんだろ?」
シュウは外で踊っている2人に目を向ける
「レナが居るべき場所はどこなのか....
それに、あいつは俺達の手には負えない」
夜崎も逆巻もこれ以上彼女を拘束してはいけないんだ
あいつの手を取れるのはこの世でただ1人....
「....俺はお前を殺す気はねぇよ」
「ッ....?」
アヤトは真っ直ぐシュウを見る
『お前に協力してやる』
そう放ったアヤトの顔は、まるで悪戯を仕掛けるように楽しげだった