第18章 表裏
その後、俺はレナを抱き抱え、火の中を走り、屋敷の裏から森の中へ走った
もしかしたら、戦いに出た父が戻ってくるかもしれないと思って、屋敷が見えなくなる前に1度後ろを振り返った
屋敷の窓は割られ、火の手も益々広がっていた
俺は自分の役割を思い出し、すぐ様森の奥へと逃げ込んだ
薄暗く、虚ろな自分を現実と繋いでくれたのは胸の中で眠るレナだった
随分と進んだ先で俺は足を止めた
体には火で受けた火傷があり、子供の自分には体が追いつかなかった
ルキは自分の動かない足を強く叩く
(ここで、終わるわけにはいかない....
レナを守るには....くそっ!!)
そんな自分を追い詰める彼の前から足音が聞こえる
「誰だッ!!」
ルキは警戒し、レナを隠すように盾になる
暗闇から姿を現したのは、神のように威圧感を放つ長身の男だった
ーーーあぁ、エレナ....これがお前の運命か....
そう呟くその人の目はとても憂いに満ちていた
『その子が、レナだね』
「っ!」
不思議な雰囲気の彼をルキは睨みつける
だが、その人はルキの目を見て何かを確信したような顔をする
『哀れな子供達....
生まれながらにしてその身に逃れられない運命を宿している』
全てを知っているように話す目の前の男にルキは動揺を隠せないでいた
「あなたは....一体....」
『カールハインツ』
「っ!!」
『私の名だ
そして、エレナの義兄でもある』
カールハインツ....
それは、現在この魔界を支配しているヴァンパイアの王
レナの叔父に当たるこの人ならば....
「カールハインツ様....お願いです。
彼女を....レナを助けてやってください
貴方様ならば全て知っているはずです」
必死に訴えるルキ....しかし、
『私には彼女を救うことは出来ない』
「ッ!!」
『ただ....最善の手を告げることは出来る』
「....それは....一体なんですか?」
カールハインツは少し間を置き、言葉を紡ぐ
ーーー彼女を夜崎に戻すのだ