第18章 表裏
その後、俺達は同じ時を過ごすようになった
エレナは自分を本当の息子のように思ってくれた
父を愛している彼女なら、卑しく思ってもおかしくはないのに、彼女も父も俺達を大切に見守ってくれた
レナはまだ幼く、手が掛かったが、彼女と居ると心が休まった
許嫁なんて肩書きが無くても俺にとって、レナは特別な存在になっていた
家族がいて、レナがいる
偽りかもしれないが、それはひどく心地よかった
しかし、その日々も長くは続かなかった
二人が来て約半年が経ったある日
『殺せ!!』
『きゃあぁぁ!!』
突然、屋敷が襲われた
それは最近力を付けたラルク家だった
しかし、紋章は夜崎の物を身に着けており、全ては夜崎祥匙の差し金だった
きっと、レナを取り返す為だろう
俺達は家の奥へと身を寄せた
「るき...ッ...」
泣く彼女を抱きしめ俺は最善の策を考えた
どうか、彼女だけは...
すると、部屋の中に胸から血を流すエレナが入ってくる
「お母様ッ!!」
倒れるように彼女は2人を抱きしめた
そして、苦しそうに声を出す
「..ご、めんな....さい。もう...これしか...」
彼女はレナの頭に手を置く
そこからは鋭い光が放たれた
それと同時にレナは意識を失う
「ッ!!レナ!!」
エレナは彼女に呪縛をかけた
その特別な血と自分の記憶が将来彼女を傷つけないように
「る....き...」
エレナはルキの頬に手を当てる
「貴方の...運命を、狂わせて...しまった
そして...未来も...
ごめん...なさい...」
俺は首を横に振る
「そんな事はないです....貴方と父上とレナと過ごした時は....本当に幸せでした」
ルキの目には涙が溜まっていた
再び憧れたあの日々を思い出す
「....貴方は優しい人...ですね
お父様....そっくり
お願い....です。貴方だけしか....レナの味方はいない....」
彼女の鼓動が徐々に失われていく
「俺が....彼女を守ります。必ず」
この言葉に躊躇いはもうなかった
「あ、りがとう....
愛しています...ルキ、レナ...」
彼女は静かに息を引き取った