第17章 舞踏
「お前....その事知っていたのか....?」
カールハインツには母親違いの歳の離れた妹がいた
リヒターとは違い、随分疎遠になっていたそうだが、カールハインツはエレナの事も大切な妹として思っていたそうだ
「俺が知ったのはあいつが死んでから結構後だけど」
こいつがここまで知っているということは想定外だった
なら俺のこともさしずめ調べはついているのだろう
しかし、そこへ踏み込んで来ないことは幾分有り難かった
「しかし、あの方はレナの事を生け贄として同意したのだろう?」
「いや、どうせ上辺だけだろ。
そうして自分の所へ置いていた方が安全で都合がいいしな
夜崎祥匙も俺達もどうせは親父のゲームの駒だろ」
ルキは同意するように笑う
「確かに、あの方には何もかもお見通しなのかもしれないな
俺達がどう動くか考えるか....
俺の雑念など....」
あの方はずっと昔から気づいておられるのだろう
俺の中でレナが代えることの出来ない存在だということも
「知ってるか....?」
シュウは立ち上がって、服についた芝を払い落とす
「?」
「あいつ、俺の前で全然笑わないんだ
無理に笑顔つくって
いつも部屋の中で泣いてる」
「........」
そして、苦笑を浮かべながら口を開く
「あいつの横に並ぶのは俺じゃない」
「ッ....」
シュウはそう言い残し、屋敷の中へ消えていく
独り残ったルキは思わずため息をつく
俺はなんて愚かなんだろう....
怖かったのかもしれない
また彼女に近づき、現実を見て苦しむ自分やそれに巻き込んで彼女を傷つけることが
しかし、もう遅い
気づくと俺は跪いていた
泣きそうな彼女の瞳に自分の姿が映るよう
王の番犬としてではなく、1人の男として俺は手を伸ばす
俺は決めた
どんなに困難な道でも俺はこいつを手に入れる
例え、死を招く運命でもその先にあるのが暗黒の闇でも俺はお前を守るために生きよう
今度こそはお前の隣で....
だから今は、貴女と踊り明かしたい
そう思ったと同時に俺の掌には小さな手が重ねられた