第17章 舞踏
ーーーー俺は思わず目を奪われた
夜会の会場にはたくさんの客が居り、美しい女も大勢居るはずなのに
俺の目はレナしかうつさなかった
薄い桃色と白のドレスは彼女にとてもよく似合っており
俺の心は自然と満たされた気持ちに陥った
このまま、あの美しい姫を手に入れたい
一瞬でも俺はそう思った
しかし、俺は自らの手を見てその気持ちを投げ払う
俺の手は穢れてる
それに、俺にはあの光を掴む資格もない
だから俺は少し冷たく言い放った
すると、彼女の顔はどこか悲しげな表情に変わる
理不尽な事をして俺は彼女を傷つけた
そして、姫として前に座る彼女に声をかける男達を見て、なんだか壁が出来ているように思えた
そんな彼女を見るのが辛くて、弱い俺は辺りを見張るため庭に出る
「なんだ、あんたも来てたのか」
泉に続く坂の方から突然声をかけられ俺は視線をそちらに向ける
すると、そこには逆巻の長男がいた
「またサボりか?」
こいつはいつも夜会に来てもこうして会場に混ざらず、独りで外に出ている
まるで人を避けてるようにも思えた
「あぁ。今日はとくに面倒だからな」
シュウは大きく欠伸をする
「...レナの相手はお前だろう?」
ルキも概ねあの方の考えは理解できた
きっと、あの方はこいつとレナが共に血を分け合う事を望んでいらっしゃる
「あんたさ...」
シュウはふっとルキを小馬鹿にしたように笑う
「言葉とは裏腹に全然納得いかないって顔してるぞ」
「!」
俺は自分の顔がいつもより強ばっていた事を自覚する
頭でどんなに肯定化しても、体は正直だった
「いい加減素直になれば?
見ててイラつくんだけど」
こいつは俺を試すのが趣味なのか、それとも弱味を握りたいのか俺の心に雑念を与えてくる
自分の欲しいものに一番近い男だからなのだろうか俺はなんとも言えない悔しさがこみ上げる
黙り込むルキにシュウはため息をつく
「言っておくが、俺は親父に直接あいつを手に入れろなんて言われたことは無い
むしろ、親父はレナの事を父親以上に溺愛してる」
「どうゆうことだ?」
「カールハインツはレナを生け贄にするなんてこと望んでない
だって、あいつの本当の母親は....エレナは親父の"義妹"なんだから」