第17章 舞踏
執事に少し休憩すると伝え、私は泉の見える柵で囲われた庭へ出る
会場からは光と音が少し聴こえるくらいの距離で辺りは静かだった
空を見上げると大きい綺麗な満月が見える
それに魅入っていると
『美しい....』
「!」
後ろから声をかけられて振り返る
『お久しぶりです。レナ様』
「貴方は....お父様の知人の....」
昔パーティーで見た事のある青年の姿に私は少し警戒する
彼の父はあまり良い印象はなかった
「なんの御用ですか?」
『いえ、ただ月を見上げる貴方がとても美しく見えたものですから
つい、お声をかけてしまいました』
「随分とお上手な事をおっしゃいますね」
彼の言葉も笑顔も全て偽り....
レナを欺けるほどではない
私はさり気なく1歩間合いをとる
『貴方はとても美しく成長された....
どうか、今夜は私と共に居てはくれませんか?』
すると、彼は私の腕を掴んだ
「お離し下さい....
今宵の夜会はまだ続きます
どうぞ、会場へお戻り下さい」
彼は私の言葉に苦い顔をしながらもそれを聞き流し、腰に手を当てる
「貴方の全てを知りたいのです」
「お、お止め下さい!!」
私は必死に胸を押し返す
その男は暴れるレナの肩を抑え、舌なめずりをする
恐れを感じ目を閉じる
すると....
『お戯れが過ぎるのではないですか?』
聞き慣れた声....
私はまさかと思って顔を上げる
「る、ルキくん....」
そこには男の手を掴み上げたルキの姿があった
彼は鋭い目つきで男を睨む
「ひいぃ....!!」
男は直様庭を飛び出す
それを見てため息をつくルキを私はただ呆然と見上げていた