第2章 巡会
一刻後。
亜弥と出掛ける際に愚図った為、知章を伴い知盛は参内した。
一時は亜弥を噂の的にしていた女官達も、今では仲の良い一家を微笑ましく見ていた。
「失礼致します。知盛にございます。父上のお呼びに従い、参内致しました。」
一族が集まる部屋を前に、知盛が珍しくはっきりとした声音で喋る。
「おぉ、知盛!待っておったぞ、入れ!」
「失礼致します。」
知盛が襖を開けて入れば、そこには既に自分を除いた平家が勢揃いしていた。
亜弥もその後ろから丁寧に礼を尽くし、知章と共に中に入る。
「おぉ!十六夜!久しいのう!知章も。相変わらず、可愛いのう。」
清盛の言葉に、亜弥は微笑みながら答える。
「お久し振りですわ、御義父上様。知章もお会いしたいと、言っておりましたわ。」
「そうかそうか。知章!こちらに来い。」
清盛が手を差し伸べると、知章は嬉しそうに清盛の元へ行く。
実は清盛は自他共に認める、子供好きだった。
「――十六夜の君。こちらへどうぞ。」
先に座っていた重衡が、亜弥の為に席を空ける。
「重衡様。有難うございます。」
亜弥が席に着いたのを確認して、知盛は知章を清盛から取り上げ自分の横に座らせる。
第9夜~きらびやかな未來に目眩を覚えた~
「――父上。今宵の呼び出しは、一体何用なのです?」
誰もが気になっていた事を、知盛が問う。
「そうであったな。入れ。」
清盛が声を掛けると、一人の男性が部屋に入って来る。
亜弥はその姿に、目を見開いた。
「――ぁ。」
静かに呟いた亜弥に、重衡が目ざとく気付く。
「十六夜の君?どうされました?」
「――まさ、おみ?」
亜弥の声に皆が注目する中、将臣も目を見開く。
「――亜弥?お前、亜弥か?!」
今にも亜弥に飛び掛りそうな将臣の前に、知盛が立ち上がる。
「――十六夜。控えていろ。」
その命令に、亜弥は自分の立場を思い出す。
「――差し出がましい真似を致しました。申し訳ございません。」
頭を下げる亜弥を、将臣は驚愕の表情で見ていた。