第7章 終幕
後日、和平が結ばれる事となった。
源頼朝の名代として、九郎が平家を訪れていた。
それに伴って望美や譲も平家にいた。
「――まさかこんな形で和平がなるなんてね。」
自分が時空を超えていたのは何だったのだろうと、望美は少し苦笑する。
「良かったじゃないですか。これまでの戦いが報われたんですから。」
「譲くん――。うん、そうだね。」
苦笑しながら頷けば、正装をした将臣が現れる。
「お、ここにいたのか。探したぜ。」
「将臣くん!――その格好は?」
「ここでの正装だ。俺は今日は還内府として出席するからな。」
その言葉に、望美と譲の顔色が変わる。
「兄さん。まさか帰らないつもりなのか?」
譲の言葉に、望美も不安そうに見る。
「あぁ――。俺はここに残る。」
「亜弥ちゃんは?」
望美の言葉に、将臣は顎で部屋の中を指す。
そこには将臣と同じく正装をして知盛の横に立つ亜弥の姿があった。
「アイツはもうここに居場所を見付けちまったんだ。帰らないだろうよ。」
「――そう。」
知盛の横に立つ亜弥はとても幸せそうで、望美は切ない気持ちになる。
「将臣。ここにいたの?」
「お、亜弥か。悪い。もしかして時間か?」
話し込んでいる間に、亜弥が将臣を探しに来る。
「えぇ。皆様、集まっていらっしゃるわ。」
「すぐに行く。――じゃあ、な。望美。譲。元気で。」
将臣の言葉に、亜弥は二人に視線をやる。
「――ゴメンね。二人とも。一緒に帰れなくて。」
「亜弥姉――。兄さんの事、宜しくな?」
譲の言葉に、亜弥はゆっくりと頷く。
「亜弥ちゃん――、今幸せ?」
問われた言葉に、亜弥は穏やかに微笑んだ。
最終夜~洗いたてののカーテンに涙が滲めば、貴方がくれた花束の香りがして~
月が欠けて行く。
水面に映った月を見ながら、男は呟いた。
「俺と共に来るか?」
「この命、尽きるまで。」
それは月だけが見ていた物語。
2009/06/04 完結
2015/12/18 再掲