第2章 巡会
それから2年後。
ある夜。
親子三人で寛いでいた、知盛の元に使者が訪れる。
知盛はと言うと息子を腕の中に抱き、亜弥の膝を枕にして寝ていた。
亜弥もゆっくりと目を閉じ、知盛の髪を梳いていた。
こんな時間が、亜弥には愛おしく感じられた。
「――失礼致します。知盛様。よろしいでしょうか?」
琵琶を奏でていた瑠璃が、ふと手を止める。
「――どうした?瑠璃――。」
「使者が参られた様です。間もなく兄上が、こちらに参りましょう。」
瑠璃が答えて間もなく、硬牙が部屋に入って来る。
第8夜~きっと明日も美しいわ!~
「失礼致します!知盛様!清盛様からの、ご使者にございます。」
硬牙の言葉に、知盛は気怠そうに亜弥の膝から顔を上げる。
「――何だ、突然。」
知盛が起きると、腕の中の知章が起きたく無いと愚図る。
「存じませんが、火急の用件との事にございます。十六夜様を伴って、至急参内せよとの仰せにございます。」
硬牙の言葉に、知盛よりも亜弥が反応する。
「――私も?」
「どういう事だ?」
二人は訳が分からないと言った様に、目を合わせた。
「とにかく。知盛様?清盛様がお呼びとなれば、急いだ方がよろしいのでは?」
亜弥が言うと、知盛もそれに頷く。
「――あぁ。けれどお前を伴ってとは、どうにも附に落ちんな。」
寝癖を撫でながら、知盛があくびをかみ殺す。
「――えぇ。そうですわね。」
「まぁ、良い。瑠璃。早く亜弥の支度を整えろ。硬牙!一刻後向かうと、使者に告げろ。」
「御意!」
二人はすぐに頷くと、瑠璃は亜弥を連れて奥に消えた。
残った知盛は、知章を抱き起こす。
「おい。イイ気なモンだな。お前は。起きろ。」
「ん~――。父上ぇ、眠い――。」
自分と同じ銀色の髪を振り乱しながら、息子が愚図る。
その光景を、知盛は何とも不思議な気分で眺めていた。
まさか自分が、子供を愛しいと感じるなんて。
知盛が自嘲的に笑うと、それに気付いた知章が亜弥似の大きな目をこちらに向ける。
それに気付いた知盛は、言葉を発さずに頭を撫でてやった。