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鏡花水月【遥かなる時空の中で3】

第2章 巡会


亜弥がこの世界へ来てから、1年後。
亜弥は無事に、男児を出産した。
名前は『知章』と名付けられ、平家に歓迎された。

「義姉上。ご機嫌麗しく存じます。」
「これは、重衡様――。こちらこそ。」

平重衡は、知盛の弟だった。
二人はまるで双子の様に、瓜二つであった。

「知章殿は、お元気ですか?」
「えぇ。良く食べるので、元気に育ってくれていますわ。知盛様にも、良く懐いてらして。」

亜弥が思い出した様に笑うと、重衡もつられて笑う。

「兄上が御子をあやしている姿など、少し前までは想像出来ませんでしたからね。」
「ふふ。そうですわね。でも知盛様は、良い父親ですわよ?」

笑う重衡に亜弥が言うと、重衡も満足そうに頷く。

「えぇ。今では兄上は子供好きだったと、平家一門では噂ですよ。」
「まぁ!皆様も、お酷いこと。」

二人が楽しそうに話していると、知盛が入って来る。






第7夜~美しく時は曖昧にとろけ合う~





「亜弥。――重衡。来ていたのか?」
「これは、兄上。お邪魔しておりますよ。」

知盛は一度だけ頷くと、当たり前の様に知章を伴って部屋に入る。

「まぁ、知盛様!知章は寝てしまいましたの?」

亜弥が声を掛けると、知章は知盛の腕の中で少しだけ身じろぎをした。

「あぁ。はしゃぎすぎだ。コイツは。俺が昼寝をしている間、ずっと庭を駆けずり回っていたからな。」

口とは裏腹に、知盛の瞳は優しそうに息子を捉えていた。

「知盛様。知章をお貸し下さいませ。寝かせて参りますわ。」
「いや、いい。俺が行こう。」

知盛は亜弥に制止を掛けると、そのまま奥へと連れて行った。

「兄上は――。変わられましたね。」
「そうですわね。」

重衡の言葉に、亜弥も静かに頷いた。

「しかし、兄上がお羨ましい。」
「重衡様?」

突然重衡に腕を掴まれ、亜弥は目を丸くする。

「義姉上の様な、素敵な奥方を貰われたのですから。」
「重衡様――。勿体無い、お言葉ですわ。」

二人を包んでいた空気は、知盛の呼び声で壊された。
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