第2章 巡会
「御子――?!亜弥様!真にございますか?」
一番に反応したのは、硬牙と瑠璃だった。
「――亜弥。そうだな?」
「はい――。申し訳ありません。」
亜弥は喜ぶ二人を尻目に、睫を伏せる。
「――何故謝る?」
知盛は訳が分からないのか、亜弥に問う。
「私に子供が出来たら、知盛様にご迷惑がかかりますでしょう?」
「バカな女だな、お前は。――産め、亜弥。責任は取ってやる。」
「知盛、さま?」
知盛に抱き締められた亜弥は、目を丸くする。
「亜弥。俺の妻になるか?」
「――宜しいのですか?」
「あぁ、亜弥。俺と添い遂げろ。」
知盛は亜弥の髪を梳くと、それに口付けた。
「――はい。」
第6夜~刻まれた今日~
翌日。
知盛は亜弥を伴って、父・清盛が住む本家へと向かった。
亜弥は綺麗に正装をしており、擦れ違った者は必ず彼女を振り返った程だった。
「父上。我が許婚、十六夜でございます。」
「――十六夜と申します。以後、お見知りおきを。」
知盛と亜弥がひれ伏すと、清盛は優しい声音で話し掛ける。
「表を上げよ。知盛。これはまた随分と、器量良しを見初めたものだな。」
「恐れ入ります。父上。十六夜は、私の子を成しました。婚儀を、お認め下さいますな?」
知盛が確信的な笑みを浮かべると、清盛も快く頷いた。
「勿論じゃ。十六夜と申したな。平家一門は、そなたを歓迎する。」
「有難き幸せにございます。」
恭しく亜弥は、頭を垂れた。
「十六夜殿――。どうか我が息子・知盛を、お願い致します。」
知盛の母で清盛の妻である時子が、優しく亜弥に微笑む。
「こちらこそ。よろしくお願い致します、御義母上様――。」
「そう堅苦しくするで無い、十六夜。我等は、もう家族なのだからな。」
亜弥はその言葉に、清盛の器の大きさを感じた。
「有難うございます、御義父上様。」
暖かい平家の面々に触れた亜弥は、ココで生きていく決心を固めた。