第2章 巡会
「――硬牙。亜弥はどうした?」
昼間から気怠げに、酒を煽っていた知盛が問う。
「亜弥様なら瑠璃と一緒に、菓子を作っておいででしたが?」
妖狐でありながら亜弥に仕える硬牙が、知盛に酒を注ぎながら答える。
「女と言うのは、どうして菓子が好きなのか。」
「そうでございますね。」
二人がそんな事を呟いていた事など、亜弥と瑠璃は知らない。
「瑠璃~!そっちの加減は、どう?」
「亜弥様!良い出来かと!ご確認頂けます?」
瑠璃が鍋の蓋を開けながら、亜弥に言う。
「どれどれ~?――ぅぐっ!」
「亜弥様?!」
鍋の空気を飲み込んだ瞬間、亜弥が戻した。
瑠璃が慌てて、亜弥の背中を摩る。
「ゴメ――、瑠璃。」
「亜弥様!さ、横になって下さいませ!兄上に知盛様を、呼んで頂きますから!」
その頃。
硬牙は瑠璃からの、メッセージを受け取っていた。
「知盛様。亜弥様が、お倒れになられたそうです。」
「何――?」
ふと喋り始めた硬牙に、知盛は眉根を寄せる。
「意識はあるそうですが、吐かれたようです。知盛様も、お早くとの事。」
「――ふん。便利なものだな。」
少しだけ自嘲気味に笑いながら、知盛は重い腰を上げた。
第5夜~もうすぐ可愛い日々にたどり着く~
「瑠璃。亜弥はどうだ?」
水を汲んでいた瑠璃に、知盛が背後から問う。
「知盛様!今は、落ち着いていらっしゃいます!突然、吐かれてしまって――。それで!」
「あぁ、良い。原因は分かっている。」
「え?」
瑠璃が問うが、知盛は答えず亜弥の元に行く。
「亜弥――。気分はどうだ?」
「知盛様!この様な格好で、申し訳ございません。」
亜弥が起き上がろうとするのを制止すると、知盛は口を開いた。
「亜弥。子が出来たな?」
その言葉に、答える者はいなかった。