第7章 終幕
「?!きゃぁぁぁ!」
「何?!何が起こったの?!」
その頃。
壇ノ浦では突如、政子が悲鳴を上げて倒れた。
「政子?!どうしたんだ!」
頼朝が政子を抱き上げるが、彼女の顔からは血の気が引いている。
「九郎さん、どういう事?」
望美が問うが、九郎は答えない。
「頼朝公。ここは引いて下さいませんか?」
「お前は――!」
場違いな落ち着いた声音で現れたのは重衡だった。
「し、ろがね?」
望美が呆然と重衡を見れば、彼は優しく微笑んだ。
「奥方についていた神は恐らく兄上が倒しました。貴方も薄々操られていたのはお分かりだったのでしょう?」
「ッッ?!」
重衡の言葉に、頼朝は唇を噛み締める。
「平家はこれ以上の争いを望みません。引いて下さるのであれば我々もこの場を離れます。」
「協定を結ぼうと言うのか。」
政子を抱きしめたまま、頼朝は問う。
「我が当主・清盛は既に怨霊です。協定は結べないでしょう。このまま我らを見逃して頂けるのであれば、我らは表舞台には出ないとお約束致します。」
重衡の言葉に、頼朝は仕方なく頷く。
「その提案、聞き入れよう。ただし平重衡と言ったな。貴殿とその兄、平知盛だけは元の位に戻そう。鎌倉復興に協力せよ。」
「御意――。」
恭しく頭を垂れる重衡を一瞥すれば、頼朝は政子を抱き上げてその場を後にした。
第48夜~いかないで、とおく、手の届かぬ夢の果てに~
「銀!――重衡さん、どういう事?」
バタバタと望美が重衡の側へと駆け寄る。
「お聞きになった通りですよ、源氏の神子殿。戦いは終わったのです。」
笑顔で諭す重衡に、望美は何故だか泣きたくなる。
「知盛――、は?」
「さぁ――。今頃、どちらにおられるのやら。」
クスクスと何もかもを理解しているであろう重衡は笑った。