第7章 終幕
「綺麗な十六夜ね。」
亜弥は一人、夜の月を眺めていた。
「まるでお前が現れた日のようだな。」
「とも、もり――さま。」
不意に声がした方を振り返れば、知盛が柱を背に立っていた。
「――いつ、お戻りに?」
「たった今だ。」
そっと手を伸ばす亜弥を知盛は力強く抱き寄せる。
「ご無事で良かった。」
「あぁ。」
視線が絡む。
その手が髪を梳く。
重ねられた唇は泣きたいくらい暖かくてそれだけが真実だった。
「ン――、知盛様。待って、聞きたい事が――。」
「後にしろ。」
早急に事を急ぐ手に笑いが込み上げながらも、亜弥はその手に全てを委ねた。
第49夜~想い出の春を混凝土に刻み込む~
「龍の逆鱗――?」
「あぁ、コレだ。」
散々亜弥の身体を貪ったあと、知盛は一連の出来事を話してやった。
「綺麗――。コレで時空を超えるのですか?」
「そうだ。源氏の神子もコレで時空を行き来していたしな。」
「望美が――。」
知盛に抱き付いたまま、亜弥は呟く。
「亜弥。戦いは終わったがお前はどうする気だ?」
「望美達と戻るかと聞いていらっしゃるのですか?」
ズバリ問い掛けて来る亜弥に、知盛はゆっくりと頷いた。
「私が帰ると言ったらどうなさいます?」
「知れた事だ。俺が返すと思うか?」
グッと亜弥の手を布団に縫いつければ、馬乗りになって口角を上げる。
「なら聞かなくても分かってるじゃないですか。――私は貴方のお側を離れるつもりはありませんわ。」
その言葉に、知盛は満足そうに笑った。
「当たり前、だな。」
ククッと楽しそうに笑えば、知盛は再び口付けた。