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鏡花水月【遥かなる時空の中で3】

第6章 応報


「知盛、それを返して!」

望美が叫ぶ。
けれど知盛は逆鱗を弄びながら笑っているだけだった。

「さて。これが手に入った以上、俺はここに用は無い。じゃあな、神子殿。」

ニヤリと笑った瞬間、知盛はそのまま海へと落ちた。

「知盛?!いや~ッッ!!」

船の上には、望美の叫び声が轟いた。









第46夜~劣化していくわたしの睫毛~













「――ッッ?!知盛、さま――?」
「どうなさいました?亜弥様?」

編み物をしていた亜弥が不意に顔をあげる。

「瑠璃、嫌な予感がするの。知盛様に何かあったんじゃ――?」
「義姉上。落ち着いて下さい。兄上は決して貴方を残していなくなったりなどしません。」

重衡が亜弥の背中を擦りながら、宥めるように言う。

「重衡様!でも――。」
「義姉上。少しお休み下さい。お顔が真っ青ですよ。」

重衡は亜弥を抱き上げると、寝所へと運ぶ。

「重衡様!おろして下さい!知盛様が――!」

バタバタと暴れる亜弥を余所に、重衡は無理やり布団の中に亜弥を下ろす。

「ご無礼をお許し下さい、義姉上。」
「え?グッッ!」

重衡は申し訳無さそうに呟けば、亜弥に手刀を食らわせた。

「しげ――、ひらさま――。」

亜弥は重衡の衣を掴みながら、意識を失った。

「手荒な真似をして、申し訳ございません。義姉上――。」

亜弥の髪を撫でながら呟けば、重衡はその場を後にする。

「瑠璃。兄上から、連絡は?」

寝所を出れば、瑠璃が控えていた。

「万事上手く行ったようでございます。知盛様は無事に逆鱗を手に入れられたとの事。」
「そうですか。では私も行きます。瑠璃、義姉上の事は頼みましたよ。」
「かしこまりました。」

しっかりと返事をする瑠璃を見届けてから、重衡は一人陣を後にした。
目指すは、壇ノ浦。
全ての歯車は知盛の手に委ねられていた。

「クク――。全て終わりにしてやるさ。」

彼の手には、二つの逆鱗が握られていた。
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