• テキストサイズ

鏡花水月【遥かなる時空の中で3】

第6章 応報


その頃。
知盛は硬牙を連れて、壇ノ浦へと赴いていた。

「硬牙、どう思う?」
「何がでございますか?」

どこか不安そうな知盛の声音に、硬牙は目を見開く。

「亜弥だ。重衡が上手くやったと思うか?」
「どうでしょう。亜弥様は聡明な方でございますから。」

その言葉に、知盛は空を仰ぐ。

「――ク。後で怒るのだろうな、我が君は。」

どこか楽しそうに、知盛は呟く。

「知盛様、本当に宜しいのですか?」

硬牙の言葉に、知盛は口元を歪める。

「愚問だ、硬牙。万事上手くやれ。」
「御意にございます。」

硬牙はそれだけ言えば、その場から姿を消した。





第45夜~眠ることは容易いと貴方は嘘を吐く~





しばらく海を眺めていれば、後ろから足音が聞こえて来る。

「――来た、か。ようこそ、源氏の神子殿。」

くるりと振り返れば、そこには望美がいた。

「知盛――。やっぱり貴方と戦う運命なんだね。」
「その目は嫌いではないがな。やはり今の俺を高ぶらせてくれるのは一人だけらしい。」

剣を構えながら、流暢に言葉を紡ぐ。

「知盛、覚悟!」

望美も剣を構えれば、知盛に向かって行く。

「お前は何の為に戦う?」

剣を交えながら、知盛は問い掛ける。

「それは――。貴方を死なせたくないから!」

望美の言葉に、知盛は眉根を寄せる。

「俺の為、とでも言うか?それならば余計な世話だ。」
「そんな!」

あっさりと呟かれた一言に、望美は思わず動きを止めた。
その瞬間を見逃さずに、知盛は望美の首元にあった逆鱗を奪い取る。

「ッッ!?知盛、何を?!」

望美は慌てて首元に手をやるが、そこに逆鱗は無かった。

「貴様はこれでもう過去には戻れぬ。」

ニヤリと笑った知盛の手には、白龍の逆鱗が握られていた。
/ 50ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp