第6章 応報
一行はその後、後白河院と別れ宿へと戻った。
「――じゃあ、二人とも。手伝ってくれて有難う。」
「あぁ。これでまた敵――、同士だな。」
将臣の言葉に、望美は俯く。
「――どうしても一緒には来れないの?」
望美の言葉に、将臣はふるふると首を振った。
「分かってんだろ。俺らはお互い守るべきものが出来ちまったんだ。」
「亜弥ちゃん――、も?」
望美の視線が亜弥に向く。
けれど答えたのは亜弥ではなく知盛だった。
「無理だな。俺が平家にいる限り、こいつは動かぬ。」
尊大に言い放つ彼にあるのは、絶対の自信だった。
「でも――!」
その瞬間、場の空気を壊すような声が聞こえる。
第39夜~空蝉の渇いた断末魔~
「あっ!父上!見付けた!」
「――知章?」
思ってもいなかった息子の登場に、流石の知盛も面食らう。
続いて少し後ろから、亜依と重衡が現れた。
「亜依?!重衡様も!どうしてここに?」
驚きを隠せない亜弥に、重衡が笑う。
「申し訳ございません。お二人がどうしても熊野に行くと聞かなかったもので。」
「まぁ!二人とも!重衡様を困らせてはダメでしょう!」
思わず二人を叱れば、シュンと俯く。
けれど知盛はくつくつと楽しそうに笑いながら、知章を抱き上げた。
「違うな、亜弥。重衡はこいつらに託けてやって来ただけだ。本当は自分が来たかったのではないのか?」
「おや。流石は兄上。お見通しでしたか。いい加減私だけ蚊帳の外は飽きてしまいましたからね。仲間に入れて頂こうと思ったまでですよ。」
しれっと言い放つ重衡に、亜弥と将臣は苦笑いを浮かべた。
「――しろ、がね?それに――、誰?この子達?」
展開について行けない望美は、重衡の顔を見て驚愕する。
「――?『初めまして』。こちらのお嬢さんが源氏の神子殿ですか?平重衡と申します。以後、お見知りおきを。」
その言葉に、望美は無性に泣きたくなる。
彼は、『銀』ではないのだ。