第6章 応報
「――神子殿はどのように未来を変えるつもりだ?」
「ッッ?!何の話?!」
知盛の口から出た言葉に、望美は目を見開く。
「余計な御託は良い。お前が望む未来はどのような未来なのだ?」
誤魔化そうとする望美の顎を掴めば、逃がさないとばかりに視線を合わせる。
「知盛。何を知ってるの?」
その紫暗の瞳に、望美は初めて恐怖を感じる。
「質問しているのはこちらだ、源氏の神子殿。」
「――手のうちを明かして。」
あくまで話す気のない知盛に、望美も食い下がる。
「――ク。無駄、か。まぁ良い。俺の邪魔だけはしないで頂こうか。さもなくば斬る。」
それだけ告げれば、知盛はその場を後にする。
残された望美は、首に下げた白龍の逆鱗を握り締めた。
「――何で知盛が。」
その様子を知盛は木陰から見つめていた。
「首、か。」
知盛が知りたかったのは、白龍の逆鱗の在り処だった。
第37夜~菩提樹曰くあの日は嵐の夜だった~
やがて知盛が戻って来ると、亜弥は笑って出迎える。
「お帰りなさいませ。硬牙が水を持って来てくれましたわ。飲まれます?」
「あぁ、貰おうか。」
知盛の返事を聞けば、亜弥は瑠璃と用意を始める。
それを見ながら、知盛は硬牙を手招きした。
「やはり源氏の神子も持っているらしいな。道理であの女は、俺を見たことがあったわけだ。」
二人に聞こえないように、知盛が囁く。
「時間を行き来して運命を変えていると言うわけですか。どうなさいます?」
「今は泳がせておけ。首、だ。いざとなったら奪え。」
「は。」
そんな二人の密談を、将臣は遠くから見つめていた。
「お待たせ、将臣くん。」
「望美。お前、あいつに何かされたか?」
戻って来た望美に、将臣は心配そうに問い掛ける。
「ううん。大丈夫。」
真実を全て知る者は、誰なのか。